執事的な同居人
「似合ってるもなにも……」
「実は俺、こういう所で働いてみたかったんだよね~」
「……ここに連れてって欲しかったのもそれが理由?」
「もちろんっ。男に囲まれたい趣味なんてないし俺。女に囲まれた方が断然良い」
「そんな理由で…」
ここに来たのかと。
呆れて溜め息が出そうになったけど……
「ああ、違うって。ここに来たかったのは、前から働きたいと思ってたから。
俺の家、母子家庭なの知ってるだろ?だからお金もそんなにあるわけじゃない。
なくたって幸せなのは変わりないけど、母さんは俺に何不自由させない為にも毎日働いてる。大学に行かせてくれたのも母さんが一生懸命働いてくれたから。だから……大人になった今、その負担を少しでも減らしてあげたいんだ。
少しでも、出来れば余裕のある家庭にしてあげたい。となると大きく稼げそうなところで働きたくて。
それで思い浮かんだのがホストクラブだった。大きく稼げるなんて簡単じゃないことくらい分かってるけど、俺にはこれが最適だと思って。」
真剣な目。
嘘をついてるなんて思えるはずのない内容。
カイがお母さんのことを大切に想っていることは前から知ってる。
「でも……別にここじゃなくても良かったじゃん。ホストクラブなんて他にもいっぱいあるのに…」
「ここが良かったんだよ。石沢サンの知り合いならきっと良い人達だろうし」
そう言われては、嫌な気分になるわけがなく。
「まあ…」
確かに良い人達だけど……
「だからさ、」
高そうなソファーに腰を下ろしたかと思えば、
「石沢サン、お願い。」
クンッとカバンの紐を引っ張られ、
自然と身体が傾くと
「少しの間、俺の練習相手になってよ。」
なんだか帰るにも帰られない状況に。