執事的な同居人





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「こらこら、そんな勢い任せに座るのはダメだよ。『お隣よろしいですか?』そう断りを得てから座る。これ基本だから。分かった?」




卒業したらホストクラブに連れてってと言われ、約束通り連れて行くとカイはホストの格好で登場し、





「お隣よろしいですか?」


「あー…はい、どうぞ…」





そして今日も私はホストクラブ体験をさせられている。





「ほら、練習練習」





そう言う涼さんはなんだか楽しそうで。


優雅に脚を組み、ちゃっかりお酒飲んでるし。





『少しの間、俺の練習相手になってよ。』




そう頼まれたものの、このお店の持ち主は涼さんであって。



「遊びじゃないんだよ」って怒られるに決まってると思っていたけど、





「練習?おっけおっけ!」





なんて簡単に許可を貰っていた。




この人ってホント自由な人だなー…





「キミは顔も良いし、早速入って欲しいくらいだけど一応ここは高級なホストクラブで名が通ってるからね。お客様の大半が金持ちだ。だからそれなりの対応をしなくちゃいけない。」





だからこそ、新人には少しの間接客マナーなどの練習という日数を設けるらしい。



どの店舗もやっていそうなことだけど、ここは他の店舗よりも丁寧な接客が求められているため、練習メニューも細かい。





「ワインボトルを持つ時はラベルを上に向けて持つ。こうやってね」


「意味あるんですかそれ」


「相手に対してワインの銘柄をきちんと示唆する為だよ。さっきも言っただろ?ここは高級なホストクラブなわけで、ワインにもそれなりの値段がついている物を用意してる。まあ値段関係なく、ワインボトルを持つ時はこうやって持つこと。」


「ふーん…了解です」





2人の練習風景を近くで見ながらも、私自身も学ばせてもらってたり。




涼さんって自由な人だと思っていたけど、やっぱり経営者だけあって色んなことを知ってる。





教えてもらっていることは当たり前のようなことばかりだと思う。



けれど、今までワインボトルなんて持ったこともなければ飲んだことすらないのだから、初めて知るマナーに私も聞き耳をたてて学ぶ。


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