執事的な同居人
「おかえり。」
「た…ただいま…」
玄関のドアを開けてすぐ
そこには仁王立ちで立ちはだかる颯太さんがいた。
こうやって出迎えられるのも、私が出迎えることも。全ていつも通りではあるけど……
「今日は大学でレポートをしていたのでしょう?期限も近いみたいですし。」
颯太さんから放たれる威圧に「うっ…」と声が漏れては身体が硬直する。
『大学』『レポート』
その言葉を分かりやすく強調して言うものだから
(これは……完全にバレてる)
怒られてるわけではないけれど、
久々に聞く颯太さんの敬語口調に
ニコリと微笑むその顔は今じゃとても恐ろしく、
「さぞかしお疲れのようで。」
残酷な冷笑だった。
(どうしようどうしようどうしよう)
笑顔が尚更怖い。
もはや怒鳴ってほしい。
だからこそ、私の脳内では
逃げる!
逃げる!!
逃げる!!!
しか選択肢が浮かばない。
逃げ場所なんてこの家の中では無いというのに。例えそうであっても今この瞬間だけは逃げ出したい気持ちで山々だった。
「だ、大丈夫だから…!あっ、この匂いはシチュー!?最近寒くなってきたし食べたいと思ってたんだ~…!!」
その気持ちが前に出てしまい、
この恐ろしい空気感をどうにか変えようと話を逸らして、家の中に足を踏み入れた。……が。
トンッ
肩を軽く押されてしまうと、背中に感じるのは硬い感触。それが壁だということに気づけたのは一瞬で。
「俺に、言うことがあるでしょう?」
不敵な笑みを浮かべる彼に挟まれているのだから。