執事的な同居人






「紀恵さん。」





名前を呼ばれ、ハッと我に返る私。





「もう一度聞きますが、

" 俺に "言うことはありませんか?」





私が隠している全てのことを


確実にこの人は気づいているのだから、


言い逃れなんて出来るはずもなく…





「ご、ごめんなさい……」


「何が?」


「っ…嘘、ついたこと…」





颯太さんは私の嘘を毎度見抜いてしまう。



それは私が嘘をつくのが下手だからか、それとも私のことをよく見てくれているからなのか。






(怒られる…!)



ギュッと目を閉じて覚悟を決める。が、






「分かればよろしい。」





颯太さんはさらりと笑って、私の頭をぽんと撫でた。



そしてスタスタとリビングの方へ向かうと、近かった距離に空間が生まれた。





(えっ、…それだけ?)





呆気なく終わった、颯太さんからのお叱り。



「悪い子にはお仕置が必要ですね」とか、
「1週間はピーマン尽くしにします」とか。


言われかねない内容だと思うんだけど…





(もしかして……呆れられた?)





いつもと違うその対応に、


微かに焦りを感じさせられて、呆気なく終わったことに寂しいとも思ってしまう。





私って……ドMなのかな。


好きな人……颯太さんには叱られたいなって思ってしまうし、嫉妬だってしてほしい。





けれど今の颯太さんはなんだか素っ気なくて…


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