執事的な同居人
結婚について
「就活したくないよ~」
ある日の大学の昼休み。
この大学に入学してから仲良くなった3人とご飯を食べ終えると、1人の友達が机に突っ伏して1冊の冊子を眺めてた。
その冊子は就職活動についてたくさん書かれてあるもの。企業説明会の日程やら、面接での服装、身だしなみなど当たり前のことまで。
いろんな情報がそれに書かれてる。
「来年から私達も就活生だもんね~」
「早いなぁ…もう4回生だよ」
「卒業したくなーい」
みんなの言葉に、私も うんうん と頷く。
就職活動かぁ…大学受験の時みたいに、また慌ただしくなるんだろうな。
時の流れは本当に早く、私は既に20代に。
颯太さんと暮らす日々は今も尚続いていて、付き合い始めてから数年が経っていた。
「紀恵はいいよね~」
「ん?なにが?」
不意に私へと向いた会話。
「素敵な彼がいるじゃん。」
「いやいや…就活となんの関係もないじゃん」
既に友達には颯太さんの存在を知られている。
いつの日か颯太さんが大学まで迎えに来てくれた時、その場にこの子達もいたものだから紹介する流れになった。
後日根掘り葉掘り聞かれたっけ…
私の返答に「だって、ねぇ~?」なんて。
周りの子に確認するようにニヤニヤと笑みを浮かべるこの子。
みんなもその視線に頷いて───
「「「専業主婦になる道もあるじゃん!」」」
……と。みんな声を揃えてそう言った。
「…………は?」
専業……主婦?
「まって?まず結婚してないし!!」
「卒業してからすればいいじゃ~ん」
「そうだよぉ~ しかも相手は社会人!なおかつイケメン!!お金ありそうで包容力もありそうで、見た感じ仕事も出来そうだし!」
それに関しては何も言い返せない。
お金は……知らないけど、確かに包容力はある。
私のワガママだって何も言わずに受け入れてくれるくらいだもん。
「誰かに取られる前に固い繋がりを結んでた方がいいって!」
「そうそう。誰かに寝取られる前にね~」
「寝っ…?!」
そ、それって……
たぶん、きっと、あの行為…だよね?
思い返すと身体がドッと熱くなるも、
「ありえない話じゃないよ?
実際彼氏寝取られた子とかいるし。」
必死に友達の話に耳を傾けた。