執事的な同居人




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颯太さんがその話から避けたくなる理由って何なんだろう。



講義中はもちろんのこと、1人になるとその事ばかりを考えてしまう私。




颯太さんはもうそれなりの年齢なのに
『結婚』に焦っているのは私だけ?





大学の帰り道、本屋前を横切ると不意に今日は雑誌の発売日だと思い出し誘われるようにしてその本屋さんへ。



例の雑誌を探しつつも、その雑誌コーナーには『結婚』についての本もあって。





「……………」





思わず手に取ってしまう。




パラパラとページをめくる度に幸せがいっぱい詰まったそれを見ていると心が穏やかになる。





(ウエディングドレス…可愛いな。)




颯太さんタキシード絶対似合うよね。見てみたいな~。




私はまだ学生だけど、残り1年ちょっとで学生も卒業。



その後はどこかに就職し、結婚して、家庭を持って──…




この先の未来について。


そんな話しを、したいのに…。





「石沢サンっ」

「っ!?」





耳元で聞き覚えのある声がしては慌てて雑誌を閉じる。





「もうっ…驚かさないで」

「何度か声かけたんだけど?」



「なのに気づいてくれなくてさ~」っと、
そう言うカイは私の手元に視線をあてて



「集中して読んでたんだ?」

「違う」

「隠さなくてもいいのに」

「あっ!」





ヒョイッと取り上げられたそれ。





「へぇ~。石沢サン、ウエディングドレスとか興味あるの?ちょっと意外。」

「うるさいな…」





こういうこと、前にもあったような。




………ああ、そうだ。あの時だ。


あの時もちょうど颯太さんのことで悩んでいて『恋愛心理学』って本を手に取っていたときに声をかけられたんだった。

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