執事的な同居人
その瞬間、胸がキュンっとなって
今まで感じた事のなかった感覚に陥る。
なんだこれは、と眉根を寄せるが
その感覚の正体がなんなのかは、なんとなく理解はできている。
「(これが俗にいう胸キュンってやつか)」
部屋から出ていく颯太さんの後ろ姿を見つめながら
私は静かにそう思った。
まさか颯太さんに胸キュンするとは考えてもみなかった事で
少し驚いている自分もいる。
「(今のは違う人にされても胸キュンするはず)」
だから特別ときめいたわけじゃない、そう思っていよう。
「すみません、冷えピタもうないようですね」
「あ、そうだった。」
「じゃあビニールに氷と水でもいれて…」
そうブツブツ言いながら
またこの場を離れていく颯太さんに私もついて行く。
「どうしました?せっかく下がったのにまた熱上がりますよ」
「んー喉乾いたの」
そう言えば、颯太さんは少し温かいお茶を用意してくれて
「冷たいのだと喉を炎症させますから、ぬるいので我慢してください」
喉が腫れてるかもしれないので、と私に上着を引っ掛けた。