執事的な同居人





「紀恵さん、こっちです」




出掛ける準備を終えた私は颯太さんの待つ場所へと向かう。




颯太さんの近くには黒色の大きな車。すごく綺麗でピカピカと輝いて見えた。




「大きい車だね」



「そうですか?
これが普通の大きさだと思うんですが…」




いやいや、
全然普通じゃないよこの大きさ。




リムジンまではいかないけど、親が持っている車より大きい。




「………そういえば、颯太さんってなんでずっと敬語なんですか?
私より年上ですよね?」




助手席に座るなり私はそう聞く。




「んー、そうですね…。
癖だと思います。仕事場でもずっと敬語ですから」




車をゆっくりと走らせる颯太さん。




癖、ね…。
それにしても変な癖だな。




「ふーん」と呟き、目線を窓の外に向ける。




うっすらと窓に映る颯太さんの横顔をジッと見た。




「なんか颯太さんって執事みたいだね」




スーツだし、年下の私にも敬語だし。




「それ、よく言われます。」




すると颯太さんは、クスリッ、と笑う。

< 6 / 422 >

この作品をシェア

pagetop