執事的な同居人
「紀恵さん、こっちです」
出掛ける準備を終えた私は颯太さんの待つ場所へと向かう。
颯太さんの近くには黒色の大きな車。すごく綺麗でピカピカと輝いて見えた。
「大きい車だね」
「そうですか?
これが普通の大きさだと思うんですが…」
いやいや、
全然普通じゃないよこの大きさ。
リムジンまではいかないけど、親が持っている車より大きい。
「………そういえば、颯太さんってなんでずっと敬語なんですか?
私より年上ですよね?」
助手席に座るなり私はそう聞く。
「んー、そうですね…。
癖だと思います。仕事場でもずっと敬語ですから」
車をゆっくりと走らせる颯太さん。
癖、ね…。
それにしても変な癖だな。
「ふーん」と呟き、目線を窓の外に向ける。
うっすらと窓に映る颯太さんの横顔をジッと見た。
「なんか颯太さんって執事みたいだね」
スーツだし、年下の私にも敬語だし。
「それ、よく言われます。」
すると颯太さんは、クスリッ、と笑う。