執事的な同居人
「……へえ、なんで?」
あまりにもサラリと言うから
どうせ冗談か面白がって言ったんだろう
そう考えていた私が甘かった
疑い深く見つめれば
真剣な眼差しで見られている
「(ああ、マジだ)」
そう理解するのは少し経ってから。
「好きって気持ちが分からないんです。
これが本当に好きって事なのか、自分の感情がよく分からない。
だから恋愛は苦手です」
そう言う彼はとても冷静にパエリアを食べ進めていて
その話を真剣に聞いてしまう私は
やはり何処かおかしい。
「ホストのくせに」
「ホストではありません。厨房担当ですよ」
「まあそうだけど。
…ねえ、付き合った事とかは?」
「……………」
その突如、彼は席を立った。
「ごちそうさま。」そう小さく呟いて、自身の使ったお皿などを持って立った。
「(逃げたな)」
私がそれを聞いた瞬間、30秒間程固まって逃げた。
そそくさとキッチンに行く彼を追って「待ってよ」と私は腕を引っ張る。