執事的な同居人
「幼い頃の紀恵、颯ちゃんの事大好きだったのよ~?毎日毎日颯ちゃん颯ちゃんってうるさかったんだから~覚えてない~?」
懐かしそうにアルバムをめくるお母さん。
そのアルバムには私と颯ちゃんとのツーショットがいっぱいあった。
「島崎さんとは家が隣同士で仲良かったのよ。紀恵には兄弟がいないから颯ちゃんがいて嬉しかったんだろうね」
言われてみればその写真全て笑顔の私。
「あ!この頃の紀恵大変だったんだから~」
「え?どれどれ」
ほら!っと見せられた写真
「!!!」
その突如、心臓がドクンっと速まる。
「こ、れ……」
貞子かってくらいに長く伸ばされた私の髪。
「長すぎるからちょっと切ろうかって言っただけなのに紀恵大泣きしたんだから~」
「…………っ!!」
脳裏でボヤッと何かが浮かんだ。
「”颯ちゃんに褒められたから切らないで!!”そればっかり言って抵抗するから大変だったのよ~」
「まあでも結局切ったんだけどね。ちょっとだけ」そう懐かしげに写真を見つめるお母さん。
「髪……褒められた…?」
「そうよ~颯ちゃんどんな褒め方したんでしょうね。紀恵をあんなに必死にさせたんだもの」
その言葉が
霧で覆われていた思い出を
一気に弾けさせるように思い出させた。