執事的な同居人
「っーーーー」
驚きのあまりに黙り込む私。
『綺麗な髪だね。ショートじゃもったいないよ』
『えー…伸ばすと邪魔なんだもん…』
『せっかく女の子として生まれてきたんだから一回伸ばしてみな?紀恵、絶対似合うから』
『うーん……じゃあ、長くなったらチュッチュしてくれる?』
懐かしの記憶。
幼き頃の私はとても大胆だった。
(私あんな事言ってたんだっけ…)
思い出しただけでも恥ずかしい。
たぶん真っ赤な私の顔を自身の手で覆い隠した。
『いいよ。紀恵がもう少し大きくなってからね』
そう約束されたんだ。
颯太さんはこの事を覚えているのだろうか。
……まず、私と颯太さんが昔からの知り合いだった事、彼は覚えているのか。
(……いや、それはないな)
私と同じで忘れていると思う。
「でもね~島崎さん達すぐに引っ越しちゃったのよ。なんで引っ越しちゃったんだっけ?」
その突如
「母親の浮気だ」
さっきまで何も喋らなかったお父さんが口を開いた。