執事的な同居人
記憶
真っ暗な夜道を音楽を聞きながらスタスタと歩く。
実家を出てきた時は既に23時ぐらいだった。
あれからいろいろと颯太さんについて聞いてみたものの、颯太さんはあまり自分の事を話さないみたいで、
お母さんとお父さん、どちらも何も知らないらしい。
(長話し過ぎたな…)
颯太さんには実家に帰る事を伝えていない。
まあでも颯太さんもまだ仕事に行っている筈だし、伝えなくても…
周りが見覚えのある景色に変わり、そろそろ家に着く頃だと思って鍵を取り出した。
と。
「ーーーーあれ、紀恵さん?」
ついさっきまで彼の事を考えていたからか、後ろから聞き慣れた声で私を呼ぶそれにビクッと反応する。
「あっ、…颯太さんおかえりなさい。今仕事終わったの?」
「はい。今日は少し早めに切り上げてきました。」
「そ、そうなんだ~」
疲れている筈なのに笑顔の彼。
そんな彼にフト思い出す。
”島崎さんとは家が隣同士で仲良かったのよ。”
”紀恵には兄弟がいないから颯ちゃんがいて嬉しかったんだろうね”
ただの同居人だったのに
昔からの知り合いだったなんて気づくと
「紀恵さんはこんな遅くまでどちらに行かれてたんですか?」
「えっ!あ、えーと…」
ちょっと対応に困ってしまう。