執事的な同居人
「うるさいなぁ。いいじゃん、可愛いんだもん。」
パンダの着ぐるみにムギュッと抱きつき、唇を尖らせる。
ああ、もう。
本当に可愛い。
と。
「そろそろ行きますよ。夕食遅くなりますから」
「わっ…!」
グイ、と強引に私をパンダから引き離す。
「また会えますよ。いつでも」
「ああ、パンダちゃん…」
私の手首を掴んでスタスタと歩く颯太さん。パンダちゃんはどんどん遠くなっていく。
悲しむ私に対してパンダちゃんはずっと笑顔で手を振っていた。
「知ってますか?
着ぐるみって物は、中に人が入ってるんです。
さっきのパンダの中にだって人が入っているんですよ?
男性か女性か、どちらかは分かりませんが。
まあ、大半は男性でしょうね」
ニコリと笑いながらそう言う颯太さんに、ムッとくる私。
「なっ…!
なにが言いたいんですかっ!
あ、バカにしてます?してますよね!?」
ぎゃあぎゃあと子供のように叫ぶ。
「バカになんてしてません。
ただ、さっきのパンダも、中はただのおっさんだって事ですよ。」
そんな私とは真逆に、
颯太さんは落ち着いた様子で、私の反応を楽しんでいるようにも見えた。