執事的な同居人
(怒る、のかな。)
ふとそう思ったけれど、すぐに、
(いや、ないなそれは。)
怒るどころか心配されるだろう、と考え直す。
だって私と颯太さんはただの赤の他人なんだし、ただ幼い時に仲が良かっただけの仲だ。
(…まあこの人は忘れてるだろうけど)
ちょっぴり悲しい現実に、仕方が無いと自分にそう聞かせる。
「…?何か鳴ってませんか?」
「あ、私の携帯からだ」
颯太さんのおかげで気づいた着信に「はい」と名前も見ずに出れば、
『あ、出た。もしもーし』
「……………」
瞬時に思った。出なければ良かったと。
電話を出たのと同時に、颯太さんはペコリと頭を下げて私の部屋から出て行ってしまった。
(あー…もうちょっとだけ喋りたかったな)
なんて思う私はやっぱり颯太さんが気になっているから?
「…なに?王子どうしたの?」
『いやー、今から外出れないかなって』
「外?なんで。」
まだ外は少し明るいし、出れない事もないけど。
『ちょっと手伝ってほしいんだ』
「ヤダよ。他頼んで』
『お願い!石沢サン!』
「えー……」
”お願い!”なんて後からずっと連呼され、ついつい折れてしまった私。
(もしまた襲われそうになったら、今度こそ殴ってやる…)
なんて心に秘めて。