執事的な同居人
「……………」
無意識に止めてしまった。
(なにしてんだ…俺。)
紀恵さんの携帯画面に映っていた”佐々野海”という文字。
出掛けてくるっと言った紀恵さんは多分そいつに会うのだろう。
…ただそう感ずいただけなのに。
身体が自然と動いて
急いでいるそんな紀恵さんの腕を掴んでしまった。
(…行かせたくなかったのか?)
無意識にとってしまった行動が、
俺にとって何を意味していたのか自分自身でも分からない。
(あー…何考えてんだよ…)
紀恵さんに触れた手を軽く握り締めた。
(………ムシャクシャする)
そんな手には今だにあの細い腕の感覚が残っている。