執事的な同居人
標的
「あ!石沢サン!!」
「ごめん、遅くなって」
王子の待つ駅へと向かっていたら空はもう薄暗くなりかけていた。
「全然いいってそんなの!俺が無理に呼び出したんだし」
(…それもそうだけど)
私はさっきの事が気になって。
あれは本当になんだったの?
いきなり颯太さんに止められてドキッとしてしまったが、冷静を保った私。
意外と力が強くて余計に驚いた。
こんな時間から遊ぶなんて、そりゃ心配するよね。だから止めたんだと思う。
(…別に他人なんだからほっといてくれてもいいのに。)
そんな冷めた事を思うけど、本音を言えば少し嬉しかったり。
「石沢サン?どーかした?」
「…あ、いや。なんでもない。」
王子に声をかけられてハッと我にかえれば、顔を覗き込まれていて少し後ずさる。
「ふーん?…ま、行こっか。」
「あ!ちょっと…!?」
どさくさに紛れて掴まれていた手。
それに気がついたのはちょうどこの時で、王子に引っ張られて身体が前のめりになる。