執事的な同居人
「離してよ」
「いいじゃん。デートっぽいでしょ?」
「はいはい」
離してくれなさそうだから自ら振り払う。
「あっ、」とさみしげな声を出した王子が本当によくわからない。
「……で、何処行くの?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないし、なんで呼び出されたのかも知らない」
何も聞いてないのに来ている私もおかしいけど。
「あー、それはごめん。ちょっと急ぎの用なんだ」
「急ぎの用って?」
その質問に王子は笑顔を浮かべる。
「母さんの誕生日プレゼントを買う事」
「…お母さんに?」
冗談かと思った。
でも違う。ニコニコと嬉しそうに笑うその顔は嘘をついているようには見えない。
「そ。だからちょっと女の意見も聞きたくて石沢サンに来てもらったんだ」
「ふーん…」
「…この歳で、おかしいよな」
赤信号で止まると王子は苦笑いで私の顔を見つめる。