あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「奈央〜おっはよ~!」

聞き馴染みのある声に振り返る。同じタイミングで登校してきた澪と昇降口でばったり会った。

ゆるく巻いたブラウンのロングヘアに、ピンクと白のチェック柄のマフラーがよく似合っている。

「おはよう澪」

それにしても、そんなにスカートを短くして脚冷えないのかなぁ、なんて冷めた私はどうでもいいことを考える。

私は見た目なんてどうでもいいから、万全な寒さ対策を徹底したい。

「澪、脚寒くないの?」

「あのさぁ奈央、おしゃれのためなら寒さぐらい我慢しないと!ってそんなことどうでもよくて……」

「なに?」

「ビッグニュースがあるんだよ!」

ローファーを靴箱にしまい上履きに履き替えながら澪の話に耳を傾ける。

「ビッグニュースって?」

「なんとなんと!今日隣のクラスに転校生が来るらしいよ!」

澪はオシャレだし流行りや噂話に敏感だ。だから大抵のことに置いていかれている私に、色々な情報を吹き込んでくれる。
< 10 / 210 >

この作品をシェア

pagetop