あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「ねえ奈央、今日ってなんの日かわかる?」

不意に質問を投げかけられて我にかえる。

「えっ?えっと……なんだろう。なんかの日だっけ?」

「奈央ー、忘れんなよ。今日はホワイトデー」

「……ホワイトデー?」

あぁ、すっかり忘れてた。この一ヶ月の間、色々な出来事がありすぎて、流れるがままに日々を過ごしていた。

「それと、今日は付き合って一ヶ月の記念日だよ」

……そうだった。

バレンタインに自分から『付き合ってください』とか言ったくせに、なんでこんなに大切なこと忘れてるんだろう。


「あぁー結人くんごめん!」

私は勢いよく頭を下げた。

「私、記憶力はいい方だと思うんだけど、記念日とかあんまり覚えられなくて。なんでだろう?数字が苦手なのかな。お父さんの誕生日とかも忘れちゃうし、あぁもう……」

頭を抱える私を見て、結人くんはいつもみたいに笑ってた。

「奈央らしいな。たぶんそうだと思ってたからいいんだ」

「これからは忘れないように、ちゃんとカレンダーに記入しておくから」

「いいよいいよ無理しなくて。それより、はいこれ」

そう言って渡された、小さな白い紙袋。
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