あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「えっ?なに……?」

「ホワイトデーのお返し」

「私、そんなに大したものあげてないのに……」

「そんなことないよ。奈央が作ってくれたガトーショコラ、美味しかった。記念日のお祝いも兼ねて。開けてみて」

紙袋に入っていた紺色の小さな箱を開けると、


「ブレスレット……」

細めのキラキラしたシルバーのブレスレットが入っていた。

「奈央に似合うと思って」

「……かわいい。結人くんありがとう。大事にする」

嬉しい。素直にそう思った。手元でキラキラするブレスレットを、いろんな角度からしばらく眺めていた。


「……きれい」

街灯に照らされて輝きが増している。

「……奈央、こっち向いて」

「ん?」

肩にそっと手が置かれ、目も合わせられないくらい結人くんの顔が近くにきた。

私は瞬間的に目を閉じた。


そして、唇に温かいものが触れた。

一瞬の出来事で、初めなにが起きたかわからなかった。

私は無意識に指で唇を触る。


……私、今、キスされた?
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