あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「……結人くん、今、私にキスした?」

「奈央、そういうことは本人に確認すんな」

目の前に笑顔の結人くんがいる。


なんで笑う余裕なんてあるのさ……こんなにドキドキしてるのって私だけ?


ファーストキスは人通りの少ない路地。

観覧車の頂上で夜景を見ながらとか、もっとロマンチックな場所になるかと思ってた。

でも、こういうのもいいかもしれない。どこでするかじゃなくて、誰とするかだ。


結人くんが優しく私の両手を握った。

「……奈央。これからもずっと、俺の隣にいてくれる?」

なんか、プロポーズみたい。真っ直ぐな結人くんの瞳に見つめられたら、頷かないわけにはいかなかった。

「……もちろんだよ。結人くんの隣にいる、約束する」

握ってくれた手に力を込め握り返した。私なりに誓ったんだ。


結人くんは目を細めて優しく微笑んだ。

「奈央のこと、ずっと大切にするから」


そう言って、もう一度優しくキスしてくれた。

今度は一瞬じゃない。


ホワイトデーにぴったりな、甘くて優しいとろけそうなキス。


……嬉しいはずなのに。いや、嬉しいのと同時に、

『もう後には戻れない。何があっても結人くんを裏切るなんてことできない』

そういう責任感みたいなのが大きくなった気がして、私の心に圧力がかかった。
< 112 / 210 >

この作品をシェア

pagetop