あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
春休み最後の日の部活終わり、帰り道は彩月と一緒だった。

「明日から三年生だね」彩月が言う。

「うん。二年生はほんとにあっという間だった」

思い返すと、高校二年生はとても濃い一年だった。

澪という親友ができて結人くんという彼氏ができて、幼なじみの遥が戻ってきて。

いろんなことがあって、ジェットコースターに乗ってるみたいな一年だった。

でも、成長できたと思うし充実していたとも思う。

高校生活最後の年は、いったいどんな一年になるんだろう。

今年は受験もあるからそんなに楽しめないのかなぁ。

「クラス替え、どうなるんだろうね」

「ほんとだー。最後だからとにかく穏やかなクラスがいいな」

「奈央はまた結人くんと一緒のクラスになれるといいね」

また結人くんと同じクラスになれたら、行事ごとも一緒に楽しめるから幸せだろうなぁ。

「そうだね。彩月も……」

彩月が前に遥を『かっこいい』と言っていたことを思い出した。


……でも、

「彩月も伊南くんと同じクラスだといいね」とは、どうしても言えなかった。

「ん?なに?」

「……彩月も楽しいクラスだといいね」

「うん。奈央と同じクラスになれたら嬉しいな〜」

とびっきりの可愛い笑顔でそんなこと言われると、自分がますます嫌になってくる。

遥は私のものじゃない。

わかってるのに。遥が彩月みたいな可愛い女の子と笑いあってる姿を想像すると、胸が苦しくなる。

でも、それはたぶん、昔からいつも一緒にいたせいで、私だけの遥だと勝手に思っていた頃の感覚が、いまだに抜けないからなんだと思う。

好きだとか、そういうんじゃない。
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