あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
私は遥に対する自分の感情がいつもわからない。

「というか澪、伊南くんのこと伊南王子って呼んでるの?」

みんなの前で馴れ馴れしく「遥」だなんて呼べない。

遥もそれに気づいてか、私のことを「奈央」とは呼ばないし、用があって話すときでもちょうどいい距離感を保っていた。

「王子以外のあだ名のつけようがないよ。成績優秀、眉目秀麗、おまけに紳士的だし。……あっ!彼はもしかして、本物の王子様なのかもしれない!」

澪の終わりのない妄想が今日も炸裂している。

幼なじみの遥は、七年経ったらみんなの王子様になってしまったみたいだ。

「まあ、澪が言いたいことはわかるけどさ」

「奈央だって球技大会のとき助けてもらったじゃない。残念ながら本人は覚えてないみたいだけどね」

「みたいだね。でもまあ、その節は感謝しかないよ」

「いいな~私も王子様に助けられたーい!」

「澪は彼氏がいるじゃん」

「彼氏と王子様は別物なんですー」

「はいはい」

一つ気になってることがあった。遥があのときのストラップをいまだにスマホにつけていること。


ねえ遥……

私はそのストラップが目に入ってきたとき、どういう気持ちでいたらいいのかわからないよ。

……どうして外さないの?

七年も前の物をそんなに大事にしているのには、なにか意味があるの?
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