あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「勝負事はなんとしてでも勝ちたい性分なんだ。助かったよ」

顔を上げると、遥は昔と変わらずはにかんだ笑顔を向けていた。

私の大好きだった笑顔。


まだ文句の一つや二つ言おうと思ってたけど、そんな顔されたら、これ以上の文句なんて言えないじゃんか。

「……それで、お題はなんだったの?」

肝心の質問を遥にした。

「えっ?」

「『えっ?』じゃないよ。うまく誤魔化さないでよね。紙に書かれたお題」

「あー、お題ね。お題は『昔からの知り合い』」

「……昔からの知り合い?」

「うん。昔からの知り合いって言われると、奈央くらいしか思い浮かばなくてさ」

「あぁ……そっか」

遥が迷わず私の方へ走ってきたのも納得ができた。

「もっと借り放題のお題だったらよかったのにな。くじ運悪いわ、俺」

「変わったお題が入ってるんだね」

「ほんと、誰がこんなん作ったんだよ」

「新種目だったから、作った人も気合い入れたのかな?……昔からの知り合いじゃ、私しか思いつかないよね」

「奈央は唯一の幼なじみだからな」

私の肩に手をポンと置いて、遥はそう言った。


……幼なじみ

「……そう、だよね」

幼なじみ、という言葉を何度も頭で繰り返しては、肩を落としてなぜかがっかりしている自分がいた。


……私は遥に、どんな答えを期待してたんだろう。

「奈央?」

心配そうに顔をのぞく遥に、

「……なんでもないよ」

いつもの調子で笑ってそう答えた。
< 128 / 210 >

この作品をシェア

pagetop