あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「奈央、伊南くんとどういう関係なの?」

書道部のテントに戻ると彩月が深刻な顔で聞いてきた。

「あぁ、ごめんね彩月」

もうこれ以上、隠し通せないと思った。

「伊南……いや、遥とは幼なじみなんだ。でもそれだけだから。私には結人くんがいるし」


彩月はもしかしたら、遥に本当に恋してるのかもしれない。

「幼なじみ、だったんだ。伊南くんが『奈央』って名前で呼んでたから、びっくりしちゃった。でもよかった」

安心したように笑う彩月に私も安心した。

「遥が引いたお題が、『昔からの知り合い』だったんだって」

「あぁなるほど!そういうことだったんだ」

全てにおいて納得したようで、いつものテンションの彩月に戻った。

「みんなにもそう言っておいて。人気者との変な噂流されるのはごめんだから」

「だね。女子の嫉妬は怖いからね」

「ほんと。気をつけないと」

体育祭が終わったら、ちゃんとファンの子たちの誤解を解こう。

それにしても、女子の腕を引いて走るなんて、遥も大胆なことしたなぁと思う。

後々面倒になるとか思わないのかな?


私があのお題を引いてたら、適当に澪とか連れてって、『昔からの知り合いです!』って嘘ついちゃうかも。

遥はそんなずるいことはしないか。昔から正義感の強い人だったから。

さっきまで掴まれていた腕にそっと触れた。


……嬉しかった。

お題がお題だったとは言え、遥が私を見つけてくれたことがすごく嬉しかった。
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