あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
体育祭もあっという間に終盤に差し掛かり、選抜リレーが始まろうとしている。

毎年一番盛り上がるけれど、今年は特に見応えがあった。

結人くんと澪が出場するからかな。

『奈央、応援よろしく。奈央が応援してくれてると思うと頑張れる』

リレーが始まる前、結人くんは私のところに来てそう言った。


……「借り物競争」のことはなにも触れずに。

本当は不安に思ったはずだけど、いつも通り変わらない結人くんだった。

ゆっくり話す時間もなかったから、『不安にさせたならごめんね』と、結人くんの背中を見送りながら心の中で謝った。

体育祭が終わったらちゃんと説明しよう。


結局、私の応援していた団はビリから二番目だった。

でも、アンカーで最後まで諦めない結人くんはかっこよくて、誰よりも輝いていて誇らしかった。


気づくと体育祭が終わっていて、帰りのホームルームも手短に終了した。

『王子様と幼なじみだったなんてずるいぞー!聞いてないぞ!平田奈央!』

さっきまで遥との関係について澪に散々問いただされていた。

いつまでも隠し通すのは疲れるし、知ってくれて逆によかったのかもしれない。


みんな帰ってしまった教室に、ちょうど夕日が差し込んできた。オレンジ色に染まった教室はなんだか絵になっている。

体育祭委員の結人くんは片付けがあるらしく、私は教室で待つことにした。

椅子に座りながら窓のところに肘をついて、外で片付けをする結人くんを二階の教室からぼーっと眺めていた。

結人くんの走る姿かっこよかったなぁ。

……私、自分が思ってる以上に結人くんに惚れてるのかな。
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