あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「……奈央?」

聞き覚えのある声がして振り返る。

「遥。帰ってなかったの?」

「俺、図書委員の仕事あったし」

「えっ遥、図書委員だったの?ていうか体育祭の日でも図書室開いてるんだ」

話はそこで途切れ、遥は何も言わず、ただ私を見つめていた。

……そんなに見ないでよ。調子狂うじゃん。


「……遥、どうした?」

遥の顔は夕日に照らされて、オレンジ色に染まっていた。

二人で見つめ合うこの時間はもどかしくて、たった数秒がとてつもなく長い時間に感じられた。


……でもその間、遥から一度も目をそらすことができなかった。

それは、大人びた遥がとても綺麗で、ずっと見ていたいと思ってしまったからだと思う。

あの頃の無邪気さは、もうない。

「……ん、なんでもないよ。ただ、奈央が大人びて、綺麗になったなぁと思って見惚れてた」

遥が大真面目な顔でそんなこと言うから、危うく騙されそうになる。

内心動揺していて、私の瞳は揺れていたかもしれない。

「……なにそれ、冗談でしょ?」

「いや、これは本音。会わないうちに、綺麗になったんだな、奈央」

優しく微笑みかけられて、瞳に吸い込まれそうになって、思わず視線を外した。
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