あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「……もう、遥の冗談には騙されないんだからね」

遥は本気で言ってくれてるのかもしれない。けれどもこの状況に耐えられなくて、笑って誤魔化そうとした。

でも遥は全然笑ってくれなくて、そのまま続けた。

「冗談なんかじゃない。七年ぶりに奈央を見つけた日からずっと、そう思ってた」

……なによ今更、迎えに来てくれなかったくせに。それでも憎めない。

「……遥、ずるいよ」

「なにが?」

「意地悪なくせに、ときどき変なこと言い出すんだから。借り物競争のときだって……」

「借り物競争?俺、なんかしたっけ?」

遥はぜんぜんわかってない。無意識にドキドキさせるんだ。

腕を掴まれたときだって頭を撫でられたときだって、笑顔を向けてきたときだって、私だけ可笑しいくらいに意識して、恥ずかしいじゃん。

「……わかってないならいいよ」

「なんのこと言ってんのか知らないけど、そんなんいい加減慣れろよな。俺、昔からこんな感じだっただろ?」

「七年も話してなかったんだから忘れたに決まってるでしょ!」

「あーたしかにな。それは俺が悪かった」

最後は二人で笑って終わる。遥と話すときは昔からずっとこんな感じだ。

でもこのテンポが心地よくて、結人くんと話すときとはまた別の感覚なんだ。
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