あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
今の遥に関しては、わからないことだらけだ。遥がいなくなってすぐ、片付けを終えた結人くんが戻ってきた。

「リレー勝てなくてごめん。奈央の声援、ちゃんと届いてた」

帰り道にそう言われた。

「結人くん最高にかっこよかったよ。さらに好きになったかも」

最近、可笑しいくらいに素直になったと自分でも思う。

「あんまり、可愛いこと言うな」

いつものように手が繋がれる。手の感触、温度にも少しずつ慣れてきた。

結人くんの手は安心する。

「あのさ結人くん」

「ん?」

「なにも触れないのも変だから聞くけど、借り物競争見てたよね?」

なにも聞いてこない結人くんに自分から話しかけた。なかったことにするのはなんか違う気がして。

「見てたよ。伊南が奈央の手を引いて走るとこ」

「でもあれ、別になにもないからね。みんな勘違いしてたみたいだけど。遥に聞いたら、紙に書かれたお題が、昔からの知り合い、だったんだって」

結人くんは何か言いたげな瞳で私を見ていた。少しの沈黙が二人を包んだ。
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