あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
梅雨入り
六月に入った。

梅雨がやってきて湿気で髪がまとまらない。セミロングまで伸びた髪を下ろすのは諦めて、一つに結んで登校する。

雨が続いて毎日憂鬱だ。


部活の片づけが終わり窓の方に目を向けると、あいにく雨が降り出していた。

「……もう。また雨かぁ」

降ったり止んだりの日が続いている。最近は折りたたみ傘も常備しているので、濡れて帰る心配はない。

五階の書道室から教室のある二階まで下りてきた。

教室を覗いてみたけど結人くんの荷物がない。


「もう帰ったんだ。あれ、今日オフって言ってたっけかな?」

無理をして合わせると負担になるからと、時間が会わない日は別々に帰ることを最近約束した。

私は全然、待つことなんて苦じゃないんだけどね。

仕方なく一人で昇降口へと向かう。

昇降口には、雨の中自転車で帰るのか、雨がっぱを着ている人が何人かいた。


学校の門を出る頃には、雨はさらに強くなっていた。

傘をさしたまま、ふと空を見上げると灰色の雲が一面を覆っていた。

……嫌な色。


まぁ、傘をさすかささないかの微妙な雨に降られるよりかは、いっそ土砂降りの方が好きだ。

その方が傘も役割を果たせるから喜んでると思う。

「なんか、雷鳴りそうだなぁ。早く帰ろう」
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