あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「えっ……本当に来てくれるの?」

「うん、二人とも行くって言ってたよ」

「本当に?信じられない……」

「よかったね。彩月」

「奈央、なに着て行ったらいいかな?伊南くんってどんな服装の女の子が好きなんだろう?」

……なーんだ、彩月もちゃんと恋してるんじゃん。


ふと思い出した。

『ワンピース、似合ってるじゃん。可愛い』

あの日遥とホームセンターに行った日、そう言われた。

それなのに私は、

「……どうだろう。遥の趣味とかよくわかんないや。ごめんね、彩月」

なんで一言、

『遥、ワンピースとか好きなんじゃないかな』

そうアドバイスしてあげられなかったんだろう。

こんな自分に嫌気がさした。最低だよ、私。

「ううん、大丈夫!幼なじみでもそんなことまではわかんないよね」

「……うん。ごめん」

「やっぱりスカートかなぁ。あ、でも遊園地だし、動きやすいズボンの方がいいのかなぁ」

そんなふうに遥を思いながら悩む彩月は、紛れもなく恋する女の子の顔だった。


『彩月と遥がうまくいけばいい。力になりたい』

……そう思いたいはずなのに。心が落ち着かないまま迎えた当日。

気持ちとは裏腹に、雲ひとつない快晴だ。

セミが鳴いている。いつの間にか梅雨が過ぎ去っていて、夏が来ていた。
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