あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「……ただいま」

「あら奈央、おかえり」

家に帰っても、お母さんは何も聞いてこなかった。こんなに目を腫らして、明らかに落ち込んでいる娘を見ても。

部屋に荷物を置いて少しの間ベッドに横になり、気持ちを落ち着かせてからリビングに降りてきた。


「……え?」

『今日の夕飯はカレーにしようかなぁ』なんてこと朝言っていたのに、私の大好きなオムライスが用意されていた。

「さ、早く食べましょう」

夕飯の途中、私はお母さんに聞いてみた。

「……なんで、何も聞いてこないの?」

「そんなのは、見ればわかるからよ。何年奈央のお母さんやってると思ってるの。つらいなら、余計なことは考えないでたくさん食べなさい」

普段はうるさいくせに、何も言わない優しさも持ち合わせている。

……まったく、すごい人だ。

その優しさにまた涙が溢れそうになった。
< 166 / 210 >

この作品をシェア

pagetop