あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
遥が戻ってきてからのことが走馬灯のように思い出された。

球技大会で倒れた私を助けてくれたこと。

ストラップを外さずにいつまでも付けていること。

借り物競争で私を見つけ出してくれたこと。

思い出の花かんむりをまた作ってくれたこと。

……私はいつも、自分のことばかりになってたんだ。

「奈央。伊南は男の俺から見てもかっこいい。見た目も中身も。伊南は奈央のこと、幸せにしてあげられるやつだよ」

結人くんは優しくそう言った。


私は自分の気持ちに気がつかないふりをして、気づいたとしても隠し通そうとして、知らず知らずのうちに結人くんまで傷つけてたんだ。

そうすることが、誰にとっても一番良いと思ってたから。


……でも、私はみんなの気持ちを無視して結局は自分のことしか考えてなかった。

自分のことばっかりで、自分の都合だけで動いてた。

私は今まで、どれほど結人くんにつらい思いをさせてきたんだろう。

「……結人くん。今までごめん。たくさん傷つけてたのに全然気がつかなくて」

もう、結人くんの顔が見れないよ。

「ごめんなんて言わないで。最後くらい笑ってよ。俺、奈央の笑顔がなによりも好きだからさ」

最後の最後まで優しい結人くんに涙が溢れた。
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