あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「……私、結人くんといられて本当に幸せだったよ。それに、つらいときにたくさん助けてもらった」

「俺もだよ。奈央、短い間だったけど、ありがとな」

結人くんが差し出してくれた手をそっと握った。

「奈央。言葉にしないと伝わらないことがたくさんある。伊南のことが本当に好きなら、どんな状況だとしても、ちゃんと伝えないとだめだよ」

結人くんには最初から最後まで、色々教わってばかりだった。こんなときにまで背中を押してくれる。

「奈央、今よりも幸せになるって約束して。じゃなきゃ俺、奈央のこと諦められない」

「……わかった。約束する」

最後は私の頭に優しく手を置き、いつものように笑ってくれた。
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