あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
友達と話をしていた彩月に声をかけた。

「彩月、ちょっといいかな」

「どしたの奈央?そんな険しい顔して」

「……彩月。あのね、私話したいことがあって」

『軽い話じゃない』そう感じ取ったのか、彩月はここで話をしようとはしなかった。

「わかった。荷物取ってくるからちょっと待ってて」


二人なにも話さずに廊下を歩いた。

まだ人のいる廊下はさわがしいはずなのに、二人の周りだけは、まるで別世界にいるかのように静かに感じた。

廊下を歩き進めていくと、さっきまで展示室として使っていた教室に自然とたどり着いた。

中にはもちろん誰もいなくて、まだ片付けていない飾られた作品たちだけが、私たちを見守っている。

二人だけの空間になった途端、妙に心拍数が上がった。


……私の気持ちを伝えたら、彩月とは今まで通りの関係ではいられなくなるかもしれない。


協力しておいてやっぱり自分も遥が好きだなんて、虫が良すぎる。

自分勝手な私を許してはくれないと思う。


でもそれも、昨日の夜考え抜いて決めたことだ。

もう、自分の気持ちに嘘はつけない。


嘘をつくことで傷つく人がいる。素直になることの大切さを、結人くんが教えてくれたから。
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