あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「相変わらず、奈央は泣き虫だな」

そう言って遥は私の涙を拭ってくれた。

「私は泣き虫は卒業したの。これは嬉し涙だから、泣いてるのには含まれないんだよ」

「なんだよそれ。まぁ、俺の前だったら多少は泣いてもいいけどな」

「私は強くなったから泣かないの」

でも、また遥が隣にいてくれると思うと、安心して「泣き虫」に戻っちゃいそうだ。


それから、お互いの知らない七年間の出来事を話し合った。

お互い七年前までの思い出で止まっているけれど、少しずつ、その空白の時間も知っていけたらいい。


——時刻はすでに十九時をまわっている。澪からラインが届いていた。

「遥、打ち上げ行かなくていいの?」

「奈央が行きたいなら行くけど?」

「私は、……遥とここにいる方がいい」

「俺も同じこと思ってた」

今日の打ち上げは、二人で欠席しよう。打ち上げに行くよりも、ここでこうしていたかった。

この時間が、とても幸せなものだから。ずっと待ち望んでいたものだから。

「あっそういえば、借り物競争の話、結人くんから聞いたよ」

「は?聞いたって何を?」

遥は驚いて、少し焦ってるみたいだった。

「昔からの知り合いがお題だったって言ったじゃん。嘘つき遥」

「ちょっと待って。なんで奈央も大野も知ってんの?」

「あのお題、結人くんも含めた体育祭委員が作ったんだって」

「はぁ?もう、勘弁してくれよな。……奈央だけにバレるならまだしも、大野にまでバレるって……」

遥はため息をつき両手で顔を覆った。
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