あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「結人くんの前でも堂々と、お題は『大切な人』だったって言えばよかったじゃん。宣戦布告的な?」

「友達の彼女を略奪なんてできないだろ。少なくとも、俺にはそんな勇気ないよ」

上から目線で偉そうなのに、平和主義でたまに弱気になるところは昔と変わらない。

「変わった」と思い込んでいたけれど、私が思うほど、遥は昔と変わってないのかもしれない。


「……でも、あのお題で私のところに来てくれたの、嬉しかったよ」

「そんなの当たり前だろ。何年の片思いだったと思ってんだよ」

……改めて言われると恥ずかしい。遥の顔をまっすぐ見れないというのは、きっと贅沢すぎる悩みだ。


「大切な人なんて、」

「……ん?」


「……奈央しか思い浮かばなかったよ」

意地悪なくせにときどき甘い。私ばかりがドキドキしっぱなしで悔しい。
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