あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「あともう一つの約束。奈央が小さい頃、この公園で俺にプロポーズしてきたこと、本当は覚えてた」

「……えっ?」

予想外の告白だった。


「その話されたとき、奈央は大野と付き合ってたからから、言わない方がいいだろうと思って言わなかった」

「遥がなんて答えたのかも覚えてる?」

「もちろん覚えてるよ。奈央が覚えてなかったのは残念だけど」


『大人になったら、遥のお嫁さんになりたい』たしかに私はそう言った。

……ただ、今の今まで、遥がなんて答えたのかを思い出せないでいた。


「遥、なんて答えたの?」

「『大人になったらもう一度、俺から奈央にプロポーズさせて』って言った」

……なんとなく想像ができて、うっすら記憶がよみがえってきた気がする。

「遥の方がませてるじゃん。幼稚園児でしょ。普通そんなこと言う?」

「それはお互い様だろ?」

普通の幼稚園児じゃ絶対に言わない。でも遥だったらありえるかも。

想像してみたら可笑しかった。

「それで、その約束はどうなるの?」

期待を込めて聞いてみた。

「お互いの想いがあるうちは、約束は有効だよ。ただその約束、もっと具体的にしてもいい?」

「具体的にって?」

「俺が社会人になって、なにがあっても奈央を一生守っていけるぐらいの自信が持てたら、そのときは俺からプロポーズする」

「ふふっ、随分と覚悟を決めましたね。じゃあ、それが次の約束だね。約束は絶対だよ」

照れて笑ってしまったけど、嬉しかった。


私は小さいときによくしていたように、遥に小指を出した。

「約束は、どんなことがあっても必ず守るよ」

遥の言葉は信用できる。どんなことがあっても、私は遥を待ち続けられるよ。

——遥の小指と私の小指が重なった。
< 194 / 210 >

この作品をシェア

pagetop