あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
大人になりかけだった二人は、素直になることの大切さを、まだ知らなかったのかもしれない。

でも、懐かしく思えるあの日々がなかったら、今の私たちはここにいられたかわからない。

順調にいかず、すれ違いも経験したからこそ、得られたものがたくさんあった。


いつなくなってしまうかわからない幸せを、今まで二人で大切に育ててきた。

「もちろん。忘れるわけないよ」

遥は安心したように小さく笑った。


告白をしてくれたあのときと同じように、一呼吸を置いた。

遥のまっすぐな瞳。重なり合う視線。

「奈央のこと、一生かけて守っていく。必ず幸せにする」



——「俺と結婚してください」

未来のことなんてわからない。

ずっと一緒にいられる保証もない。

でも、二人が持っているこの小さな幸せを、できる限り大切に守っていきたい。

「よろしくお願いします」
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