あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
「竹内と笑いあってるときの横顔も、部活に一生懸命なところも、成績いいと思ったら陰でしっかり勉強してるところも、なにかあれば気にかけてくれる優しさも」

……もういいよ。結人くんの思いが十分すぎるぐらいに伝わってきて、もう、胸がいっぱいなんだ。

「あ、あとは冷静に見えてちょっとドジなところも。突然突拍子もないことを言い出すところも全部……」



「……奈央の全部が好きだよ」

照れて頭を掻いた結人くんは、「恥ずかしいから、こういうことあんまり聞かないで」って言って向こうを向いてしまった。


「結人くん。手、つなご?」

普段ならこんなこと自分からは絶対に言わない。……じゃなくて言えない。

でも、思いを伝えてくれたお礼に今日は特別。


……それに今、無性に結人くんに触れたいんだ。

「奈央、可愛すぎるんだけど」

冷え症で冷たい私の手と温かくて大きな結人くんの手が重なる。

握ってくれた手のひらの温度は、心までもじんわりと温かくした。

……この幸せが、ずっと続けばいい。
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