あの日に交わした約束は、思い出の場所で。
夢にまで見た光景
学年末テストが終わり、いよいよ二年生も終わってしまう。

この時期はテスト返しぐらいしかすることがないので、恒例行事となりつつある球技大会が行われる。

男子はバスケで女子はサッカーだ。

運動音痴な私から言わせると、せめて種目くらいは選ばせてほしかった。


——三月に入ったばかり。凍てつくような冬の寒さは通り過ぎた。

けれど、寒がりな私にとっては半袖の上からジャージを羽織るだけではまだ足りない。

ちゃんと動けばあったかくなるかな……


「奈央~!今日は君の愛してやまない彼、大野結人の活躍が期待できそうですよ!楽しみですね~!」

準備体操を終えた後、澪がいつものテンションでふざけ半分からかい半分で話しかけてくる。

「私はサッカーで足を引っ張らないかが心配でそれどころじゃないの」

「またまたー素直じゃないんだから。楽しみなら楽しみって言えばいいのに。人生損してるぞ!平田奈央」

「うるさいなーほっといてよ」

「なんかその言い方、大野に似てきた!」

「もう!いちいち言わなくていいから」

本当は澪の言う通り。本音を言うと想像するだけで頬が緩んじゃうぐらい楽しみだ。

結人くんがバスケをしているところなんて見る機会が滅多にないから。


いつもと違う一面を見たら、きっと好きが増す気がする。

こんなこと澪の前でなんか口が裂けても言えないけどね。
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