アンドロイド・ニューワールド
しかし。

問題が起きたのは、その後。
 
化学の授業のときです。

東棟のエレベーターを使って、例の遠回りをして理科室に辿り着いたとき。

授業開始のチャイムから、既に3分近くたっていました。

これでも、道中の廊下は急ぎ足で来たのですが。

残念ながら、エレベーターの速度までは変えられませんからね。

致し方ない犠牲でしょう。

二人仲良く、遅刻の屍です。

しかし。

理科室に入るなり、化学教師は溜め息をつき。

「何だ、お前ら。また重役出勤か?」

遅れてやって来た私と奏さんに、そう言いました。

「全く良いご身分だな。一度でもチャイムに間に合ったことあるか?もっと早く来れないのか?ったく…」

と、化学教師は再度、わざとらしいほど深々とした溜め息をつきました。

そのときの奏さんは、まるで消え入りそうなほどに縮まって、決まり悪そうにしていました。

成程。

このような人に、このようなことを言われるから。

彼は、私と友達になることを躊躇したのですね。

理解しました。

ならば、私がこのようなことを言われたとき、どのように対応するのか。

奏さんにも、見て、聞いてもらうとしましょう。

「あなたこそ、良いご身分ですね」

と、私は化学教師に向かって言いました。
< 104 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop