アンドロイド・ニューワールド
「簡単な算数の計算も出来ず、教師、ひいては大人としても非常に幼稚な発言をして、一人の生徒を傷つけた。あなたは教師の風上にも置けない。人間として最低な部類に入ります」

「ちょ、る、瑠璃華さん…」

と、奏さんが慌てて振り向きましたが。

一度言ってしまったことは、取り返しがつきません。

そして私の舌鋒もまた、止まりません。

「こんな教師ばかりなのですか、この学園は?転入してきてまだ一ヶ月もたちませんが、ろくな教師を見ていません。教師とはそういうものなのですか?それとも、あなた方がただ無能なだけなのですか?後学の為にも、是非教えてください」

「…」

と、化学教師は、真ん丸と目を見開き。

生まれて初めて恐竜でも見たかのように、呆然としていました。

その反応も、あの体育教師と同じですね。

やはり、程度が知れるというものです。

肯定もしなければ否定もしない。つまり返事をしないことによって、自分の意見に対する責任を持ちたくないという訳です。

いっそ、「はい、私は無能な教師です」と宣言した方が、余程潔いというのに。

「しかし、そんな愚かなあなたにも、救いの道は残されています」

と、私は言いました。

「世の中には、自分が間違ったことや、相手を傷つける発言をしたときに、『謝罪』を持ってその罪を償うことが出来ます」

と、私は言いました。

無論、謝罪だけで、全てがなかったことになる訳ではありません。

前述の通り、一度口から出てしまった言葉は、取り返しがつきませんから。

やっぱり今のなし、は通用しません。

従って、この無知な化学教師が出来ることは。

「あなたが今取れる選択肢は二つ。奏さんに謝罪して許しを乞うか、あるいは…。教師に相応しくなかった自分を恥じ、今すぐに、学園に退職届を出すか。このどちらかです」

と、私は言いました。
 
どちらを選んでも、あなたが教師として愚かな人物だという事実は変わりませんが。
 
それでも、謝罪をすれば、少なくとも人間としてはマシな人物であったと、認めざるを得ないでしょう。

過ちは誰しも犯すものです。が、その過ちについて反省し、行動を改めるかどうかが、人格者であるかそうでないかの境目です。 

反省もしなけれな、行動を改めるつもりもないのなら。

あなたには教職に就く資格はありませんし、何なら人間として生きているだけでも、恥ずべき行為でしょう。
 
そんな恥を晒して生きる覚悟があるなら、そうすれば良いでしょう。

しかしその場合、私はこの人を教師として認めません。

…すると。

「あ、あぁ…。わ、悪かったよ…」

と、化学教師はしどろもどろになりながら、謝罪の言葉を口にした…。

…つもりなのかもしれませんが、それは全く謝罪になっていません。
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