アンドロイド・ニューワールド
おかしいです。

私は、かなり丁寧に説明したつもりだったのですが。

何故か伝わっていません。

人間なら、誰もが一度はハマるのではなかったのでしょうか。

「一体どうしたの?瑠璃華さん。いきなり…」

「?何がですか?」

「どういうこと?今何してるの?何の質問?」

と、奏さんは尋ねました。

「何と言われましても…。これは心理テストです」

と、私は説明しました。

すると。

「…あ、成程そういうことか…」

と、奏さんは納得したようでした。

分かって頂けたようで、何よりです。

では改めて。

「さて、奏さん。あなたならどれを選びますか?直感で選んでください」

「…そう言われても…。何だか、選択肢がどれも爬虫類に偏ってて、嫌なんだけど…」 

と、奏さんは言いました。

苦い顔で。

「?爬虫類だと何か問題が?」

「問題…ってほどではないけど、可愛くはないでしょ…」

と、奏さんは言いました。

これは如何なるものか。

「爬虫類を可愛くない、と決めつけるのは、奏さんの偏見というものです。世の中には爬虫類を『可愛い』とみなす人もいて、果ては爬虫類カフェなるものも存在し、世の中の爬虫類ファンは、そのカフェに足繁く通い、そして自らも自宅で爬虫類を飼育しているそうです」

と、私は説明しました。

つまり、爬虫類はペットとして需要があるということですね。

「あ、うん。それは分かってるよ。爬虫類好きな人はいるだろう。それは俺が悪かった。…けど」

「けど?」

「…恐竜は、さすがにないでしょ」

と、奏さんは言いました。

何故か、ちょっと遠い目で。

「そもそも公園に爬虫類がいる、っていう前提がおかしいよ…。なかなかいないよ?公園にイグアナとかアリゲーターとか…」

「そうでしょうか?世界は広いです。もしかしたら、イグアナ、ガラガラヘビ、アリゲーター、恐竜の4種が揃った公園が存在し、そこに奏さんが居合わせることもあるかもしれません。人間の運命とは、分からないものです」

「うん。確かに人間の運命は分からないものだね。…でもさすがに、恐竜はない」

と、奏さんは言いました。

断言されてしまいました。

奏さんは、恐竜が苦手なのかもしれません。

恐竜カフェなるものがあったら、私は行ってみたい気がします。

「それはともかく、どれを選ぶか教えてください」

「え、あー…。そうだっけ。うーん…」

と、奏さんは少し考えました。

「心理テストとは、熟考するものではなく、直感で選ぶものです」

「分かった、分かったよ。どれも可愛いとは思えないけど…ヘビ苦手だし、ワニは危険極まりないし、恐竜は論外だから、じゃあ…イグアナかな」

と、奏さんは言いました。

「分かりました。イグアナですね」

と、私は言いました。

確か、イグアナは。

「イグアナを選んだあなたは、鋭い爪や頑丈な顎を持っています」

「…」

と、奏さんは無言で、自分の爪を眺めていました。

短めに切ってありますね。

しかしイグアナを選んだということは、あの爪は、とても鋭く。

顎は、レンガを噛み砕くほどに強いのでしょう。

人は見かけに寄らないと言いますしね。

「そして、背中にトゲがあります」

「…ないんだけど…」

と、奏さんはポツリと呟きました。

「更には、鱗もあります」

「…それもない…」

と、奏さんは呟きました。

「…」

「…それで?」

「…?それで、とは?」

「え!?終わり?それで終わり?」

「はい。大体、イグアナの特徴は言ったつもりですが…」

「…それ、心理テストじゃない…」

と、奏さんは天を仰いで言いました。
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