アンドロイド・ニューワールド
心理テストの選択肢が、自分にとってドンピシャの選択肢ばかりとは限りません。

「直感で選んでください」

「何処も嫌だよ」

「では選択肢を追加します」

「おっ。何処?」

と、奏さんは期待を込めた目で聞きました。

そうですね…。

「5、地獄」

「…もっと嫌なところが来た…」

と、奏さんは落胆したように言いました。

さて、これで選択肢は贅沢に5つも出来ました。

これなら、奏さんも選びたい放題ですね。

「何処にしますか?」

「廃墟は怖いし…砂漠の真ん中も怖いし…心霊スポットはもっと恐いし…深海は死にそうだし、地獄は死んでるし…。なら、一番生き残りやすそうなのは…」

と、奏さんはブツブツ呟いていました。

全然直感ではないですね。

「よし、砂漠にしよう。砂漠なら、オアシスさえ見つければ、何とか生きられる気がする」

「砂漠ですね」

と、私は言いました。

「それで?砂漠を選んだ人はどんな深層心理が?」

「砂漠を選んだあなたは、暑がりです」

「…」

「そして、皮膚が乾燥しており、常に潤いを求めています」

「…」

「あとは、ラクダに乗るのが得意。以上ですね」 

「…瑠璃華さん」

と、奏さんは真顔で言いました。

「何でしょう?」

「俺はむしろ寒がりなタイプだし、特に皮膚は乾燥してないし、ラクダには乗れない」

「…」

「…」

と。

二人の間に、しばしの沈黙が流れました。

「…おかしいですね。砂漠の特徴を、出来るだけ人間に当て嵌めてみたんですが…。…奏さん、もしかして変わり者ですか?」

「それは、瑠璃華さんには言われたくなかった言葉だったよ」

「そうですか」

と、私は言いました。

「あと、さっきから思ってたけど」

「はい」

「その心理テストって、瑠璃華さんが考えたの?」

と、奏さんは聞きました。

意外な質問です。とっくに気づいているものかと。

「勿論、私が一晩かけて考えた、力作です」

「やっぱり…。そんなことで、一晩を浪費しちゃ駄目だよ…」

と、奏さんは呆れたように言いました。

が、呆れられる理由が分かりません。

友達と親睦を深める為に時間を使う。

この上なく、とても有意義な時間の使い方です。

「しかも、何でいきなり心理テストなの?」

と、奏さんは尋ねました。

これまた、意外な質問です。

「人間は友人と仲良くなると、お互いに心理テストを出し合って楽しむものだと書いてありました」

「そ、そうなんだ…。何に書いてあったの?」

「私の最近の愛読書、『猿でも分かる!心理テスト』です」

「…また、凄い本読んでるね…」

「ありがとうございます」

「いや、褒めた訳じゃないけど…」

と、奏さんは呟きました。
< 122 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop