アンドロイド・ニューワールド
およそ10秒ほど考えて。

そして、奏さんが言ったことの意味について、結論を出しました。

中間試験。

成程、聞いたことがあります。

世の中の中学校、高校では。

一般的に、学期ごとに中間試験、期末試験なるものが行われ。

その試験の結果によって、その学期の成績が決まるのです。

そして、この成績が、生徒にとってはとても大切なものだと言います。

何せ学生の本分は勉学であり、その勉学に対する評価、つまり成績ですね。

その成績の良し悪しが、学生としての本懐であると言っても、過言ではないのでしょう。

私が星屑学園に入学したのは、あくまで『人間交流プログラム』の為であり。

私自身は、成績の如何は全く拘泥していなかったので、失念していましたが。

他の生徒にとっては、この試験というイベントは、とても重要な要素なのですね。

「そうでしたね、忘れていました」

「…やっぱり…」

と、奏さんは困ったように言いました。

「これは大変申し訳ありません。奏さんは、命を懸け、全身全霊全力を尽くし、魂の最後の一滴まで注ぎ込んで、試験に臨もうとしていることも知らず。私は心理テストなどと浮かれて…あまりの申し訳なさに、頭が上がりません」

と、私は床に膝をついて謝罪しました。

所謂、土下座という奴です。

人間が人間に謝罪するとき、この上ない謝罪の仕方だと学びました。

しかし。

「いやいやいや、ちょ、瑠璃華さん、やめてってば。皆見てるから。そんな、そこまでして謝るようなことじゃないから!」

と、奏さんは慌てて私を立たせようとしました。

確かに、突如として膝をついて謝罪する私を。

クラスメイト達はぎょっとしたような顔で見ていました。その視線を感じます。

しかし、そんなことは関係ありません。

これは、私の謝罪なのですから。周囲の人間は無関係です。

「いえ、謝らせてください。私は友人として、中間試験の存在を失念するという、奏さんのアイデンティティを傷つけるような真似をしてしまい、誠に申し訳なく…」

「勝手に俺のアイデンティティを、中間試験にしないで。俺別に、試験の為に生きてる訳じゃないから!」

と、奏さんは言いました。

「…そうなんですか?」

「そうだよ…。試験の為だけに生きたくないよ、俺だって…。大袈裟な…」

と、奏さんは言いました。

ので、私は立ち上がりました。

…そうですね。

確かに世の中には、「人はパンのみに生きるにあらず」という言葉もあります。

それと同じで、学生も、試験のみに生きるにあらず、ということなのかもしれません。

「そうですか。それは知りませんでした」

「あぁ、もうびっくりした…。あのね瑠璃華さん、前から思ってたけど、君はいつも大袈裟と言うか…極端だよ」

「…?」

と、私は首を傾げました。

奏さんが、私に対する評価を口にしてくれたのは分かるのですが。

理解不能です。

私の何処が、大袈裟で極端なのでしょう?

見解の相違が見られますね。

「俺が言いたいのは、心理テストも良いけど、中間試験が目前に迫ってることも忘れないでって。それだけ」

「…分かりました」

と、私は頷きました。

脳内にインプットしておきましょう。中間試験の存在を。

よし、これでもう忘れませんね。
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