アンドロイド・ニューワールド
それでは。

「奏さん。どの科目を勉強したいですか?」

「そうだな…。瑠璃華さんは?」

と、奏さんは私に聞きました。

しかし。

「私は何でも結構です。全教科を完璧に網羅していますので」

「そ、そうなんだ…。じゃあ、俺は古文が苦手だから…古文の勉強をしても良いかな」

「了解しました。では、これを解いてみてください」

と、私は言いました。

そして、ファイルの中に入れていた冊子を、奏さんに渡しました。

「え?何これ?」

「問題練習です。テキストや、授業で使っている問題集では、限界があると思いまして」

「そういうことか。ありが…え?」

「え?」

と、私は聞き返しました。

ありがえ、とは何を意味する言葉でしょう。

「こ、この練習問題…手書きなんだけど…」

「はい。僭越ながら私が考案し、手書きで作ったお手製の練習問題です」

「…!」

「全国で行われている、高校一年生春学期中間試験の試験データを収集、かつ星屑学園での普段の授業で、重点を置かれていると思われる部分をピックアップし、複数の問題文を作成してきました」

「…」

と、奏さんはポカンとしたまま、無言でした。

ついでに言うと、学校のシステムに侵入し、過去の試験問題を閲覧し。

そこから、出題傾向を把握し、練習問題を作成したので。

この練習問題をやっておけば、恐らくこの度の中間試験は、特に難なく乗り越えられるのではないかと推測します。

学校のシステムに侵入するのは犯罪なので、奏さんには言いませんが。

勿論、閲覧履歴は全て削除しています。私の侵入が気づかれることはありません。

この程度の芸当は、『新世界アンドロイド』なら当然です。

ところで。

「どうかしましたか?奏さん。早速一問目から分かりませんか?」

「…あのさ、瑠璃華さん」

と、奏さんは額を押さえて言いました。

どうしたのでしょうか。その仕草は。

「実は俺、数学も苦手なんだけど…」

と、奏さんは言いました。

そうだったんですね。

「分かりました。ではこちらをどうぞ」

と、私は言いました。

同時に、ファイルの中から、数学の練習問題冊子を取り出して渡しました。

「…」

と、奏さんは無言で、ぺらぺらと冊子を捲り。

それを脇に置いたかと思うと。

「…実は、地理も苦手なんだけど…」

と、奏さんは言いました。

そうだったんですね。

「分かりました。ではこちらをどうぞ」

と、私は言いました。

同時に、ファイルの中から、地理の練習問題冊子を取り出して渡しました。

「…」

と、奏さんは無言で、ぺらぺらと冊子を捲り。

それを脇に置いたかと思うと。

「…実は俺、生物も苦手なんだけど…」

と、奏さんは言いました。

そうだったんですね。

「分かりました。ではこちらを…」

と、私は言いかけました。

が、

「もしかして、全科目作ってるの!?これ!」

と、奏さんは珍しく大声で聞きました。
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