アンドロイド・ニューワールド
「先程、紙で仕事をしている、と奏さんは言いましたね」

「うん。…あれ?もしかして違う?」

「いえ、合っています。ちゃんと言いたいことは伝わっているので、安心してください」

と、私は言いました。

「古文の問題は、引用されている全ての文章を理解する必要はありません。ようは、誰が何してどうなった、の大筋を理解していれば、大体の問題は解けます」

と、私は説明しました。

「たまに、重箱の隅をつつくような問題も出ますが、そういう、所謂意地悪問題は、総じて配点も低いので、それほど総合点に影響しません」

と、私は更に説明しました。

要するに、そう言う問題は無視して大丈夫、ということですね。

「しかし、奏さんは誤解をしていますね。この文章の中で、仕事をしているのはシャルロッテではなく、ルシファーです」

「え、そうなの?」

と、奏さんは驚いた様子で言いました。

単語は拾えているようですが、助動詞に躓いているようですね。

単語の意味が分かっても、その単語が意味するところを、誰がやっているのか。

それが分かっていなくては、頓珍漢な解答になってしまいます。

例えば、「おじいさん」、「山」、「芝刈り」という単語があったとして。

助詞や助動詞の付け方を間違ってしまえば。

「山がおじいさんを芝で刈る」みたいな、おじいさんが大変不幸になる事故が起きかねません。

気をつけるべきですね。

「あ、本当だ…」

と、奏さんはテキストの助詞・助動詞一覧表を確認して言いました。

理解してもらえたようで、何よりです。

「ここを間違えてしまうと、シャルロッテとルシファーの立場が逆転して、理解不能な文章になってしまうので、要注意です」

「本当だね、ありがとう。気をつけるよ」

と、奏さんは言いました。

とても素直で、良い生徒ですね。

「つまり、仕事をしてるのはシャルロッテじゃなくてルシファー…。紙の仕事をたくさん…。…じゃあ、ルシファーが書類仕事をたくさんしてる?しようとしてる?ってこと?」

と、奏さんは聞きました。

鋭い質問ですね。
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