アンドロイド・ニューワールド
大体合っていますが、ここで微妙なニュアンスの違いを訂正しておきましょう。

「この動詞を見てください。この動詞の意味が分かりますか?」

「えー…と。…ごめん、分からない」

と、奏さんは言いました。

素直で宜しい。

「これは押し付ける、強制する、という意味です。更にここに、受け身を意味する助動詞がありますね、つまりルシファーは、自発的に仕事をしていると言うより、押し付けられているんです」

「あ…成程…。じゃあルシファーは、昼も夜も、たくさんの書類仕事をやらされてる、ってことになるんだ?」

「その通りです」

と、私は答えました。

ここまで分かれば、大体話の大筋は理解出来ますね。

「押し付けられる…。登場人物は他にいないから、ルシファーに仕事を押し付けてるのは、シャルロッテさんってこと?」

「そういうことですね」

「そっか…。それで、病気って単語があるんだね。ルシファーはその過剰な仕事のせいで、病気になったんだ?」

「そうですね…。大体意味は合っていますが、その解答だと、三角ですね」

「え?どうして?」

と、奏さんは聞きました。

「奏さんが先程から、『病気』という意味で解釈しているその単語、確かに病気という意味で一般的に知られていますが、実は別の意味もあるんです」

「別の意味?えーと…。ちょっと待って。単語帳出すから」

と、奏さんは言いました。

そして、机の中から、古文の単語帳を取り出しました。

あちこち付箋が貼ってあって、なかなか使い込まれたもののようです。

勉強熱心ですね。

教え甲斐のある生徒です。

「この単語は…1、病気、病、怪我…。2、非衛生的であること。3、疲労。疲れること…。この3つのうちのどれかってことだよね。で、1は違うんだから…2か3?」

「はい、そうですね」

と、私は答えました。

気づくでしょうか。自分で気づけるでしょうか?

「非衛生的…?でも…ルシファーって確か、凄くお金持ちの貴族出身なんだよね…?それなのに非衛生的ってことはないだろうし…。3かな?ルシファーは仕事をたくさん押し付けられて、疲れたってこと?」

「素晴らしい。正解です」

と、私は言いました。

自分で気づけたようで、何よりです。

「一つの単語でも、様々な意味がありますから、出来るだけ覚えておくことが大切です」

「そうだね、分かった。気をつける」

と、奏さんは言いました。

ここまで丁寧にやっておけば、古文はもう大丈夫でしょう。
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