アンドロイド・ニューワールド
更に。

その後、他の科目にも取り組み。

奏さんの、各科目の理解度を把握したので。

私はその日の夜、また一晩かけて。

各科目、奏さんの理解度に合わせた、手書きの練習問題冊子を作り上げました。

そして翌日、それを奏さんに渡したところ。

「うわっ…。また作ったの…!?」

「はい」

と、私は答えました。

何ということもない作業だったのですが、何故か奏さんは、呆然としていました。

理解不能です。

「る、瑠璃華さん…。何日も夜更しして…ちゃんと寝てる…?」

と、奏さんは聞きました。

「『新世界アンドロイド』に、睡眠は必要ありません。強いて言うなら、定期メンテナンス時に、一時的に意識をシャットダウンするだけです」

「うん。いや…でも、ちゃんと寝てね…?俺のことは良いから…」

と、奏さんは言いました。

「そして我が家は、夜になるととても賑やかなので、睡眠に適した寝場所とは言えません」

と、私は言いました。

「え?それどういう意味?」

「言葉通りの意味です。とても賑やかなんですよ。右隣では、毎夜夫婦喧嘩の声が聞こえてきますし、左隣では、大学生らしき青年が友達を呼んで、どんちゃん騒ぎしています」

「…!?」

「更に上の階からは、下手くそなギターの音が聞こえてきます。ついでに言うと、私の住むアパートは線路が近いので、夜中でも列車の通る音がよく聞こえます」

「…」

「夜に一人でも、ちっとも退屈しませんよ。昨日の夫婦喧嘩の内容なんて、『靴下を裏返しにしたまま洗濯機に入れる』という行為について、日付が変わるまで怒鳴り合って議論していました。とても興味深い話題でした」

と、私は言いました。

「ちゃんと表にしてから洗濯機に入れろ!」という奥さんの主張と。

「そんな面倒臭いこと、いちいちやっていられるか!」という旦那さんの主張が対立し合い。

とても興味深かったですね。

「二人がどういう結論を出すのか、気になっていたのですが…。最終的に二人は、『もう良い!寝る!』の一言で、議論をやめてしまって…。最後まで聞けず、残念でした」

「…瑠璃華さん…」

と、奏さんは反応に困ったような顔で言いました。

「何て言うか、その…。…大変だね、毎晩…」

「?何がですか?」

と、私は聞きました。

とても賑やかで、退屈しない部屋ですよ?

「ううん…。あ、これ…練習問題、ありがとう…」

「いいえ。少しでも奏さんのお力になれたら、私はそれで満足です」

と、私は答えました。
< 135 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop